高校文化部の可能性を拓く /HIRAKE代表インタビュー

高校文化部の可能性を拓く /HIRAKE代表インタビュー

高校文化部を中心ターゲットとし、文化部同士の交流を促す場を提供しようと試みている学生団体「HIRAKE」。自信は野球部出身でありながら、文化部を盛り上げるべく日々奔走する、HIRAKE代表の 伊部達大 さんにお話を伺いました。

学生団体HIRAKEーー高校文化部を盛り上げたい

「高校文化部の活動を盛り上げる鍵のような存在へ」をコンセプトに活動している。代表の伊部達大さんをはじめとして現在11名で活動しており、アプリサービス開始に向けて準備中。

ーーHIRAKEではどのような活動を目指しているのですか?

メインターゲットは高校の文化部です。運動部ならば練習試合などで他校との交流がありますが、比較すると文化部は外部との交流が少なく、閉鎖的になりがちです。運動部ではわかりやすい勝敗がつきますが、文化部は勝敗がはっきりしていないため、観客がハラハラドキドキ応援する、ということが少ないです。その分部活同士で繋がりが持てたのならば、これまで以上に活動の幅が広がるのではないかと考えました。文化部には、部活同士で何かひとつのことをできるという可能性があります。それを元に「文化部×文化部」のサービスを展開していきたいと思っています。

文化部と文化部のコラボは、これまであまり大々的に行われてきませんでした。なのでまずは「こんなことができるよ」とコラボ事例を実際に見せることで、それぞれの文化部の皆さんの「私たちもやりたい」という気持ちを促せたらと考えています。

ーーHIRAKEを立ち上げようと考えたきっかけを教えてください。

僕は高校3年間野球部に所属しており、大会の時には学校や地域全体から多くの応援をして頂きました。それに対して文化部は、演奏会での集客の少なさなどをみるに、周囲からの注目度が低かったように感じています。元来ある雰囲気や風土によって運動部と文化部の扱われ方に差が出ている状況に対して、部活動の存在の大きさを実感していた僕は違和感を覚えていました。

文化部に関わっている人に対してヒアリングしたところ、当事者もそのような格差を感じていたということがわかりました。そこで、「文化部に対してより多くの人が興味を持ち、応援したくなるような何かが作れたらいいな」と考えたことがサービス発足のきっかけです。

ーー具体的にはどのような活動を行っていくのですか?

SNSのような交流や各々の作品の発信を可能とするアプリ(来年7月リリース予定)を土台とし、高校文化部同士のマッチングを促進していこうと考えています。マッチングした後どのように協同で活動していくかは、基本的に利用者に委ねます。「何をすると効果的か」ということや「自分たちの良さ」は当事者同士が一番理解していると思うので、あくまで僕らは『繋ぐ』ことを推進していきたいです。現時点では、HPやSNSを通してまずはHIRAKEの存在を多くの人に知ってもらう活動を中心に行っています。

ーーサービスを通じて文化部の人たちにどんな環境を提供したいと考えているんですか。

例えば、音楽系の部活なら、どうやって練習しているかを情報共有したり、合同で演奏を練習したり。新しい人との繋がりができ、学校を超えて仲良くなったり、互いに刺激しあって切磋琢磨したりするような環境を作りたいです。

今の現状を完璧に変えるのは難しくとも、文化部が注目されにくいという現状に対しての疑問提起や、みんなが注目するようになるためのきっかけ作りはできると思っています。文化部と文化部がマッチングすることで新たな世界ができたらいいなと。そうなるためのみんなが意識を向けるためのきっかけを作ることが自分たちの目標。

ーーHIRAKEという名前やロゴにはどのような想いが?

室内で活動を行う文化部の“物理的な扉”を開いて「より外部へ発信していってほしい」という想いと、文化部と運動部の“心理的な壁”を取っ払って「平等に活動を外へ拡げていきたい」という2つの想いが込められています。

HIRAKEロゴ
鍵穴をイメージしたロゴには、「HIRAKEで鍵を開けることで文化部の活動、魅力、興味関心を発信していこう」という意味が込められている。

「応援される」ことのよろこび――周りから応援されることを目指して

ーー伊部さんご自身は、小中高と野球部に所属されていたそうですが、印象的な思い出を教えてください。

沢山ありすぎて選べませんが、キャプテンを努めた高校3年の最後の大会ですね。4回戦に県内で一番強い高校と当たってしまい、勝てるかどうかという厳しい戦いでしたが、最終的に勝てたんです。その日、学校へ着いた時に全く知らない1年生から「おめでとうございます!」と声をかけられたんです。驚いたのですが、同時にすごく嬉しかったことを覚えています。次の日も校内を歩けば様々な方から声をかけてもらえました。それで「こんなにも多くの人が自分たちを見ていてくれたのか」と。きついことも沢山あった3年間でしたが、その一瞬でこれまでの努力が報われた気持ちになりました。

ーー周りから応援されていたことを実感できたのですね。キャプテンだったということですが、部活をやっていく上で大切にしていたことはありますか?

野球部全体で「周りから応援されるチーム」という目標を掲げていました。挨拶や服装といった当たり前のことを当たり前に行うのは部員全員が徹底していました。僕は、キャプテンだから中心になってまとめるというわけではなく、僕自身が「一番頑張るプレイヤー」であることを意識していました。

僕らは「互いに厳しさを追求できる関係」を掲げ活動していましたが、厳しすぎたが故に部員同士で衝突が起こることもしばしばありましたね。砂を投げ合ったり。ですが、その都度ミーティングを開いたり、部活以外の時間もずっと一緒に過ごしていたことで、チームワークは高まりました。

高校野球部時代の伊部さん。

花形野球部が見た文化部活動の「もどかしさ」

ーー野球部として学校中から応援される立場にあった伊部さん。高校生当時は文化部についてどんな思いを持っていましたか。

文化部の人たちは、ポスターを作って、クラスを回って宣伝をしていました。野球部は、昼休み、いつも応援してくれる吹奏楽部の演奏会に行ってましたね。

ーーなぜ?

「応援されるチーム」でありたかったから。応援されるには、応援するのも当然だと。

実際週末になって定期演奏会を見に行ったときに、知り合いは全然見に来ていなかったし、昼休み「昼ご飯も食べながらでもいいですよ」という演奏会も、見に行く人がいなくて。僕が発表する立場だったら、「どうせなら来ればいいじゃん」と感じると思うんです。寂しいというか、もどかしいというか。それが野球部だった僕から見た文化部のイメージです。

ーー運動部で応援される立場だった伊部さんから見た、文化部の「ここがもったいない」というポイントは? 

一回目に興味を持つきっかけがないこと。一度見たら、感動や興味が芽生えるのに。そこに呼び込めないのがもどかしいとかもったいない。一回行けばこういうことやっていたんだとびっくりとか、ワクワクする体験になると思うんですが。そこがないのが寂しいです。

僕が文化部の公演や展示に行っていたのは、純粋に面白いから。でも周りには、それに気づかず、応援しない人たちも多かったんです。

ーーそのもどかしさがHIRAKEの活動に直結するんですね。

そうですね。僕たちが行ったヒアリングでは、9割以上の人が「自分たちの活動をもっと見てほしい」という思いを持っていると回答していました。もし、例えば自分が生物が好きで生物部に入っていたら、生物の面白さをまわりにも知ってほしいし、そういう話ができる人が増えたら純粋に嬉しいだろうと思います。演劇や合唱、吹奏楽で本番のために何ヶ月も練習頑張っていたら、必然的にたくさんの人に見てほしいという気持ちを抱くでしょう。僕たちが、そんな文化部の人たちが輝ける場所を作るサポートをしたいです。

学生団体HIRAKE

高校生を応援する学生団体。高校文化部、そして文化部に関わるすべての人に可能性の扉を拓くことを目指す。文化部をより活発化させるアプリを開発中。

HIRAKE オフィシャルサイトは こちら

Instagram / Twitter / TikTok

高校文化部の新しい魅力や価値を「拓く」べく、日々発信活動に奔走するHIRAKEさんの取り組みは、今後益々加速していきます。

取材:モエコ

取材日:2021/7/1

 いいね

伊部達大

横浜国立大学3年生。国際経営を学ぶ。小・中・高、野球に全てを捧げてきた。

RELATED ARTICLES