マイ・コレクション / 文殊の知恵 vol.7
編集部員がいま興味があるテーマについて話し合う「文殊の知恵」企画です。
第7弾は「マイ・コレクション」。編集部メンバーが収集しているものについて話します。今まで集めてきたもの、ただ部屋に集まっていたものをそれぞれ写真に撮って紹介しました。
各々のコレクションから見えてきたのは、持ち主の人となりや、モノとの向き合い方、その哲学でした。
参加者
モエコ
集めているものは水道修理のマグネット、略して「冷マ」。みうらじゅんさんが「冷マ」の名付け親です。ポストに投函されているマグネットを、届くたびに捨てずに玄関の壁に貼ってる。一人暮らしを始めた3年前から集めはじめ、現在は壁の3分の2くらい埋まったかな。実は同じアパートの住人であるナカノも集めるの協力してくれている。
スダチ
集めているものは、「しゃくれるプラネット」というガチャガチャシリーズ。大学1年生の時から集め始めた。「しゃくれるプラネット」は全部で6シリーズあり、1つあたり6種類ぐらい。実はガチャガチャコーナーにある確率が低くてレアなの。
ナカノ
集めているものはチケット。主に美術展。実は集めるより捨てる方が好きだから、コレクションを挙げるのにも苦労したけど、チケットだけは紅茶の缶に丸めて入れて集めていた。京都に来てから1人で行った時のものが多い。今回は並べてみたけど、特に見返したことはない。
ユキノ
集めているものは漫画(単行本)。本棚の1段に並んでいる分と、段ボールに一箱分ある。集めだしたのは中学生の頃。週刊の雑誌を毎週買って読むのが苦手だが、単行本が好きなので買い足していくうちに集まった。
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「見てないだけだよ」
ナカノ
まずスダチに質問したいんだけど、なんでスダチはこれを集めたいって思ったの?
スダチ
私は集めるのがそもそも好きで、ガチャガチャも小さい頃から好き。子どもの頃は、アンパンマンのマグネットのやつとか集めたりしたし、あとは「コップのフチ子さん」も集めてた。その延長線上で、最近ハマってたのがこの「しゃくれるプラネット」。
ナカノ
ユキノはこの「集めたい」っていう気持ちは分かる?
ユキノ
今はあんまりかな。ガチャガチャをちゃんと見る機会自体が減ってるかもしれないです。
ナカノ
確かに。目線がガチャガチャに合わないもんね。
スダチ
それは、見てないだけだよ。ガチャガチャマニアはめっちゃいると思う。池袋には何百台もガチャガチャが集まっている広場みたいなのもあるし。
ナカノ
見えてないんじゃなくて、見てないんだよ、っていうのはかなり響いた。 そういうモノ、いっぱいあるよね。私も冷マはモエコがいなかったら絶対すぐポイってしてたから。モエコ的な熱を聞いてみたいな。
モエコ
私もスダチと一緒で、なんでも集めることがちっちゃい頃からずっと好きだったの。BB弾拾うために公園に行ってたし。でも私は、「お金をかけて」モノを集めることにはあまり興味を持てなくて。むしろ、元々集めることを前提としていないようなモノを集めることの方が、ウハウハできる。冷マ以外にも集めてるものは色々あるけど、全部無料で手に入るもので、かつ、統一感のあるもの。同じ形のものが沢山手元にあるっていう状態に、私は満たされるんですよね。
ナカノ
すごいロジカルでした…。同じ形とか、統一感が欲しいっていうのがモエコらしいね。
スダチ
全然関係ないんだけどさ、納豆にからしがついてるじゃん。私はからしは食べられないから使わないんだけど、一応食べ物だから捨てられなくて。めちゃめちゃ冷蔵庫にあるんだよね。
ナカノ
大魔神だな。
モエコ
ユキノに質問。漫画って、本に比べて一冊読むのにかかる時間が圧倒的に短いじゃん。毎日それを眺めるわけでもないと思うのね。だから、私にとって漫画をコレクションする人の心理って結構謎なんだよね。借りたり、漫画喫茶で読んだり、読み終わったら売ったり、っていう選択肢もある中で、なんで取っておいているのかな。
ユキノ
確かに単行本の漫画はすぐに読み終わるしかさばるんですけど、持っておきたい漫画があるんですよね。私が持っておきたいのは感動した漫画です。「この漫画すごいな」って思った時の感動がいつでも見られる場所にあることが嬉しいし、手元に置いておきたい。
スダチ
それで言うと、私も漫画集めてた。今は一人暮らしの家だからないけど、実家にはいっぱいあるのね。私は漫画も本と一緒で、「もう一回読みたくなる」から、家に置いておきたい。同じのを3回くらい読むことも全然ある。
ナカノ
私もすごいわかる。私は『3月のライオン』っていう漫画が好きなんだけど、一人暮らしの家に全部持ってくると邪魔になっちゃうから、14巻だけこっちに持ってきてるの。本当に好きなシーンが入ってる巻だけ持ってきてる。
モエコ
ナカノの部屋行く時、なんで中途半端な巻が1巻だけあるんだろうって、いつも変だと思ってたんだよね。
ナカノ
「このエピソードが読みたい!」みたいな時があるのよ。
記憶のコレクション
モエコ
ナカノのチケットは、私の冷マやスダチのガチャガチャとは全然違うタイプのものじゃん。自分が行った時の経験とか、記憶とか、そういうものをチケットっていう具体物という形として集めてるのかなって想像してた。1つ1つに個人的な体験や思い入れが付随しているのが冷マと違って情緒的でいいなあと思ったんだけど、なんのために取っておいてるの?
ナカノ
2個理由があって。1個目は、後で見返して「あ、これ行ったな」とか「あの画家誰だっけ?」とかって思い出す、記憶のきっかけになるから。もう一つは、デザインが好きなチケットのデザインを切り抜いて、スマホケースに挟んだり、ノートに貼ったりするため。
モエコ
この中でお気に入りのチケットは?
ナカノ
ピピロッティ・リストの展覧会のチケットが最近では一番好き。主にインスタレーションを手掛けている現代の女性作家。展覧会のポスターやチケットのデザインっていいんだよ。結構コレクションに実用性を求めてるのかもね。
スダチ
私も実はチケット集めてて、映画のフライヤーとかチケットも取っといてる。
ナカノ
そういうのどうするの?
スダチ
ファイルに入れとくだけ。持ってるってことに満足感を得るタイプだから。
ユキノ
私は最近映画のチケットを集め始めました。あまり集め癖ないって言ったけど、意外と私も集めてるものあるのかも。最近は展覧会に行ったら、必ずポストカードを一枚買うようにしてます。
ナカノ
ポストカードは私も買う派。やっぱり、デザインをもらってくる、生活に取り入れるみたいなことって結構好き。
スダチ
チケットは日付が入ってるじゃん。だから、もし同じものを見に2回行っていたとしても、その日付を見ると「誰と行ったの時のだ」って思い出せる。
ナカノ
わかる。チケットを日記と一緒に貼ってたりもする。モノと記憶がセットになってて、記憶をコレクションしてるみたいな。記憶が入っていると捨てにくいのもあるじゃん。スダチはそれぞれに思い出はある?
スダチ
からしは違うけど、私が集めてるものって全部自分が欲しいと思って集めてきたものばっかりだから、基本的に全部思い出がある。この生き物も、ウマだったらこれは友達と一緒にやったやつだな、とか。
ナカノ
モエコの冷マは?
モエコ
冷マ一つ一つに思い入れは、無いなあ。ただ、集めているうちに、大学4年生になるまでに玄関の扉をいっぱいにしたいっていう野望が芽生えてきた。
スダチ
いっぱいあるから郵送してあげたい。
モエコ
人から貰うのはもはや本来の野望から離れちゃうけど欲しいわ。「自分で」「これだけの量」集めたっていう達成感のために集めてる節もあるからね。ナカノからも貰ってるけど。
ナカノ
自分のポストに冷マが入ってたらモエコのポストに入れてる。
掃除の哲学
ナカノ
モエコとスダチに聞きたいんだけど、モノを集める癖があるってことは、部屋に目に入るモノが多いってことじゃん?それって嫌じゃないの?
モエコ
それでいうと、私は「コレクションの為に」モノを買うことはしたくない派だし、嵩張るものは集めてないな。買って得たものにあまり楽しみを感じなくて。偶然手に入ったものだからこそ、溜めてて楽しい。
スダチ
私はミニマリストになりたいけど、一生なれないタイプの人間なんだと思う。いつもモノがいっぱいあるから、あんまり気にしたことないや。
ナカノ
そうなんだ、意外。私は目にたくさんの情報が入ってくるとすごい「うわああああ」ってなっちゃうタイプだから。ユキノは、モノを捨てるか残すかについての哲学とかある?判断基準みたいな。
ユキノ
側から見たら散らかっているけど、自分からしたらどこに何があるか把握できているっていう状態が好きなのであまり部屋の片付けをしないんですけど、少なくとも1年に1回ぐらいは「片付けたい!」ってなることがあって、その時に一気に捨てます。基準のようなものは特になくて、衝動が来たときに捨ててます。
ナカノ
スダチは捨てたい欲求はある?
スダチ
捨てたい欲求?要らないものは捨てるけど……自分的には、要るものしか持ってないつもり。
ナカノ
からしは絶対要らんだろ。
スダチ
誰かが遊びに来たときにからしが欲しいって言うかもじゃん?
でも私もユキノと一緒で、常に綺麗とか、定期的に掃除するとかじゃなくって、一気にやっちゃう、っていう感じかも。なんか掃除の話になっちゃったな。
ナカノ
いやー、モノとの付き合い方ってこんなに違うんだなあ。面白いね。
まとめ
自分以外のコレクションにはあまり触れる機会がありませんが、掘り下げてみるとそれぞれに違う収集、掃除の哲学、そして「コレクション」の定義が見えて来ました。
「集めてるものはある?」と友達に聞いてみても面白いかもしれません。
ツジ
編集部員。京都市出身の大学生。美学芸術学専攻。
好きな言葉:「哲学的ゾンビ」
編集部での役割:ストイックな編集(を目指している)、アイキャッチ作り
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