「真面目」ってなんだろう。/辞書企画vol.1

「真面目」ってなんだろう。/辞書企画vol.1

あなたは「辞書」とどのように付き合っていますか?

「この単語の意味、なんだっけ?」そう思うときに辞書を手に取る人は多いでしょう。

辞書を調べものの道具として使うだけでは勿体ない。辞書は読書に値する。私はそう考えています。

「辞書企画」では、あなたを辞書の奥深い世界の入り口までご案内します。

「辞書」を手がかりとして、ことばと「真面目」に向き合ってみる。それが「辞書企画」です。

テーマ

企画第一弾として取り上げることばは、やっぱり「真面目」

「おーい、また『真面目』かよー」

「『真面目』『マジメ』『MAJIME』、そろそろこのサイト、真面目ばっかりしつこいよ」

そんなあなたの心の声が聞こえてきそうですが……普段何気なく使う言葉をわざわざ辞書で調べる人は、そう多くないはずです。(一部の物好きを除けば。)

「真面目」の語について、まず辞書の記述を確認した上で、MAJIME ZINEオリジナルの語釈として提案を試みます。

辞書の記述

では早速、辞書の記述を見てみましょう。

『広辞苑』には、

①真剣な態度・顔つき。本気。

②まごころがこもっていること。誠実なこと。

『広辞苑』

とあります。うんうん、納得。特に反論はありません。

けれどなんだか、掴みどころがなさすぎる。

だって多くの人は「真面目」と聞いたら、どんな人かを鮮明に想像できるはずです。

一言でイメージまでまとめて背負いこむこの言葉に、もっと厚みのある語釈を添えられないものでしょうか。

「真面目」ってどういうイメージ?

「ナカノさんは、真面目だね」

こう言われた編集長ナカノの心に生じた得体の知れない違和感、嫌悪感は、「真面目」に貼りつけられているイメージが心に引っ掛かったためでした。(コンセプト 参照。)

では、ナカノに違和感を抱かせたイメージとはどんなものなのでしょうか。

「真面目」な人といえば、シャツの裾をしっかりズボンに入れていて、リュックを高い位置で背負っている眼鏡っ子…二宮金次郎とか。小学校の校庭にいる、薪を背負って書物を読みながら歩いている、あの人です。

そんなイメージ、なんとなくありますよね。

ネガティブな印象。

「真面目」には、「泥臭い」「要領が悪い」「不器用」といったネガティブな印象が付いてしまうことがあります。

「真面目」に欠かせない要素である努力や継続は、クールな印象を与えるものとは言いがたいかもしれません。

というのも、才能や要領の良さが備わっていれば、継続的に取り組んだり、努力を重ねたりする必要などないのですから。

「真面目」の異常性。

「真面目」に付随するネガティブなイメージはどこから来るか。

その因数分解を試みると、「真面目」には、「異常」というニュアンスがあるのではないかというところに辿り着きます。

決して「真面目」な人は異常なものに取り組んでいるわけではありませんが、彼らの取り組む態度は並外れて真剣です。

「真面目」は「けなし言葉」になりうる。

では、「真面目」は人をけなすようなニュアンスを持っているでしょうか。

ここで、小・中学生の頃の休み時間を思い出してください。

休み時間も勉強していると、クラスメイトからうしろ指をさされたりしませんでしたか?「あいつ真面目に勉強してやがる」と。ひょっとすると、それが怖くて、真面目ではないフリをしてみたりすることもあったのではないでしょうか。

「真面目」ってどういうこと?「真面目」を定義する

「責任」を持っている。

ここでいう「責任」とは、自分の思考や決定、意思に対するものです。

自分の思考・決定に「責任」を持っている。それは、自分の頭の中にあることに対して真剣であるか、誠実であるか、ということです。また、自分の興味・関心や情熱に忠実であることも、自分に対する「責任」のひとつと捉えて良いでしょう。

自分が一度興味を持ったもの、やろうと決めたことを、途中で投げ出したり、中途半端に接することがないのも、「真面目」の特徴のひとつだと考えます。「真面目」なふるまいとは、決して打算的なものではありません。そこには対象に対するリスペクトや自分なりの意義があります。

真面目か否かの評価は、その対象が何であるかによって決まる。

「真面目」の語そのものは、真面目になる対象が何かという限定を持っていません。しかし、何に対して「真面目」になるかによって、その評価は変わってきます。

例えば、勉強に対して一生懸命になるのは紛れもなく「真面目」です。一方、漫画を読み耽ることに夢中になったり、ゲームに一日を費やしたりすることを「真面目」と評価する人は少ないかもしれません。

真面目か否かは頭の良さ、成績の良し悪しとは関係ない。

頭の良さや成績といった成果の程度は、「真面目」か否かの評価とは無関係です。

「真面目」といえば成績優秀というイメージがありますが、成績が伴っているかは重要ではないでしょう。

「真面目」とは、成果に対する評価ではなく、成果に向かって努力したその「過程」に対する評価の言葉と考えられるのではないでしょうか。

ニュータイプの「マジメ」。そしてMAJIME ZINE。

ここまで、一般的に「真面目」にはネガティブなイメージが付随していると述べてきました。

しかし、「真面目」は単なる堅物ではないのです。

「マジメ」とは、「物事を楽しくするもの」。

同じことをするにしても、「それなり」にこなすか、「マジメ」にやるかという態度の違いは、行為を楽しめるかどうかに影響を及ぼします。

単純作業であっても、それに真摯に向き合うことができれば、自分なりのこだわりや工夫が生じ、やりがいに繋がり、楽しさに結びつくのです。

実直にマニュアル通りの作業を遂行するだけでなく、独自の意義やコツ、工夫を見出す境地に達した「マジメ」も、存在します。

マジメの新しいかたち。許容範囲の拡大。

近年、eスポーツ(スポーツ競技としてのコンピュータゲーム)が盛んになっています。従来、ゲームが「真面目」になる対象として認められることは多くありませんでした。それが今、「プロゲーマー」として生計を立てている人がいるような時代に移行しています。

アーティストや漫画家がオピニオンリーダーとしての役割を果たす場面も頻繁に目にする機会があります。

「好きなことで、生きていく」を掲げるYouTube の世界では、数百万人の登録者を抱えるYouTuberも多くいます。YouTuber「小学生が将来なりたい職業ランキングの上位」にランクインしているのも事実です。

対象に対する「真面目」の度合いが、趣味の範疇を超え、生計を立てられるほどの熱量を維持できる人たち。彼らは決して、不器用な堅物の「真面目」ではありません。対象に「楽しく向き合う」ことができる「マジメ」さ、しなやかさを備えた人々なのです。

現代では、「マジメ」になる対象としてより多様なものが認められ、理解されてきた、世間の「真面目」に対する許容範囲が広がってきた、ということが言えるのではないでしょうか。

そして、MAJIME ZINE。

「マジメ」をテーマに、さまざまなヒト・モノ・コトをフォーカスするMAJIME ZINE。私たちも、そんな「マジメ」のニューウェーブのうちの一つです。

私たちは今後も、「マジメになってしまうその瞬間のキラメキ」を、ひとつひとつ大切に、切り取ってゆきます。

MAJIME ZINE的語釈

最後に、我々が辞書の「真面目」項を執筆するとしたら、次のように表します。

まじ-め【真面目】(名・形動)

対象に対する、誠実でまっすぐな向き合い方、態度。目的に対して過程をおろそかにせず、責任を持って取り組むさま。

 

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モエコ

副編集長。福井県出身の大学生。日本近代文学専攻。

好きな言葉:「書は言を尽くさず、言は意を尽くさず」
編集部での役割:ねちねち編集、校正、Instagram、諸々のちいさなこと

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